不登校の子、勉強のわからない子のためのプロ家庭教師です

困っている子のために

When one door is closed,many more is open. 「ひとつのドアが閉まっている時、もっとたくさんのドアが開いているんだよ」ボブ・マーリー
元不登校で共感力が強い家庭教師です。
家庭教師歴20年以上 大人の目線で見ない、世間の見方に流されません。 その子の道が必ずあります。

上橋菜穂子著作

 不登校、学習障害とくくるのは抵抗を感じます。
 ひとりひとり、全く違います。
 それぞれのお子さんの様子をじっくり見て、その子に合う方法を見つけます。授業後にお母さんとたくさんおしゃべりして、いい勉強法を見つけることも多いです。
 子供たちは色んな人の目で、色んな角度で見てあげたいですね。私もその一人です。

異質な物への理解のスタンスとは…

 上橋菜穂子さんの物語が好きです。その物語の多くには、本当の悪人は出てこず、お互いによかれと思って行動していることが通じない、異文化の軋轢が描かれてます。
 上橋さんは文化人類学者でもあるのですが、本書「隣のアボリジニ」はオーストラリアへフィールドワークに行った時の話をまとめたものです。


 
 アボリジニとは本書によれば、英語の原住民という単語から派生した言語だそうです。広大なオーストラリア大陸に住んでいた400以上の全く通じない言葉(方言を入れると600以上)を話す集団に分かれていたと。それを「イギリス人が日本人と韓国人は見分けがつかないから同じ民族だと規定してしまったと同じよう」に一括りにしました。
 この本は筆者はどのような思いで書いたのかで始まります。
 あるオーストラリアの白人の運転手さんの半ばジョーク、半ば本気といった表情で言ったアボリジニへの辛辣な評価から、筆者は「『人種偏見は悪だ』とすっきり言い切る思想を足場として考えるより、ジョークを紛らせながら出す本音、『ひどいことを言う奴だな』と、それに腹を立てながらも、どこかで怒りきれないものを感じるというような反応に現れる、複雑で、くるくる変化する意識の方に、どうしても心を惹かれてしまい」、だから、「この本は、『アボリジニは、こんなひどい事をされてきたのだ。現在も、こんなひどい仕打ちを受けているのだ』というテーマでは書くまい」、「その視点だけに囚われていては見えないことが多すぎるから」だと述べています。そして、そのような思いに至るまでは「ずいぶん時間がかかった」と「自戒をこめて」と筆者は断っています。

 さて、国際化とはなんでしょうか。簡単に言えば、異なる国の人々と共存できることだと思います。日本も国際化と言われ始めてから久しいです。しかし、ネットニュースなどでも差別の問題は散見され、ときにはテレビで大きく取り上げられます。そこで差別は「間違っている」と他人事なら簡単に言えます。しかし、実際に接したら自分の不寛容さがしゃしゃりでてくるのではないかとも思います。

 身近なことですが、欧米人にとって食べ物をすするのはマナー違反です。本書ではカルチャーショックの例として挙げていたのですが、日本人の立ち食い蕎麦屋で蕎麦をズルズルすするのを見たオーストラリアの人が「鳥肌が立つほどの嫌悪を感じた」とありました。こちらの想像以上の反応です。ならば、もっと奥にある、異民族の生き方の規範はたやすく判別できません。しかし、生活の節々には現れます。それが日常なら違和感の連続でしょう。

 異文化と暮らすことについて筆者は、
 「ひとつの町で、異なる歴史と文化を背景にもつ『異民族』が一緒に暮らすというのは、決してたやすいことでは」なく、「きれいな思想でかたづくことでもない」と。でも「もっとも『きれいな思想』を信じる心がなくなったら、それはそれで恐ろしいこと」とも断っています。

 オーストラリアはアボリジニを隔離する政策をずっととってましたが、
「次第に異文化の論理があることに気づき、自民族の利益を守ろうとする実利的な意識と、二つの文化のどちらも尊重しようという理想の間を揺れ動いている姿」に変化します。「この本で描いたことが過度に一般化されて理解されてしまうことを防ぐために」個々の出会った人との具体的な出来事、彼らを理解していく過程をきちんと語るようにしたと。著者のインタビューに進んで話してくれる人、話すと言って招かれたのに一切言わない人、始めは拒んだが、時間をかけて信頼を得てからやっと話してくれた人など。さまざまなエピソードが生き生きと描かれます。読む方に考える材料を与え、ゆだねてくれます。声高に「差別はいけない」というよりも、心にしみます。
 
 終章に 「本人たちにさえ見えない原因は、他者には、もっと見えません。そして、人は、問題がはっきりわかれば解決しようと努力するけれど、問題自体がよく見えないと、とても不安になり、なんとか型にはめて理解しようとする傾向があるのです。」
 
 …至言です。



 その傾向は、理解したような錯覚をおこしてしまう、そんな危惧を自分にも感じました。

(余談ですが…このサイトのテーマのひとつ、不登校の子も本人に見えない原因の中にいます。それに対処する周囲の傾向にもあてはまるのではと、ふと思いました。)

 理解しようとすることは必要です。さらに、理解したと思う結果よりも、常に理解しようとする姿勢自体が大切です。 そこに真摯な姿勢があると思います。これは異文化の理解のみならず、人を理解するのにも通じることです。

 

私と一緒に勉強したい方は

獣の奏者シリーズと戦争の時流

上橋菜穂子さんの獣の奏者シリーズを読み終えました。 ※外伝「刹那」を追記しました。

この著者の作品は五官に訴えてきます。
架空の動物、闘蛇と王獣のにおいはもちろんのことその感触、肌さわりも伝わってきます。
お料理も美味しそうですし。

前半は闘蛇編と王獣編、
後半は探究編と完結篇に分かれます。
書かれた時期も離れています。著者は前半で終わりのつもりだったそうです。
でも、のちに後半のイメージがわき書き始めたと。

前半はヒロインの少女時代です。

ヒロインにとって物語は過酷な始まり方します。
しかし、養父と暮らす養蜂農家の生活や獣医師になるための学舎での王獣との生活は生き生きとしており、
また、ヒロインの真実を求める探究心に惹きこまれます。

前半のラストは快く何度も読み直しました。


獣の奏者 I 闘蛇編
上橋 菜穂子
講談社
2006-11-21

獣の奏者 II 王獣編
上橋 菜穂子
講談社
2006-11-21

 
全巻を通して物語の中心的存在の獣(闘蛇と王獣)に関して「恐ろしい出来事がある」との言い伝えが物語の底流にあります。
しかし、それは触れてはならぬ掟です。ヒロインは「恐ろしい出来事」があるとは思えても伝説として伝えられ詳しいことを知らされません。また、その掟を守るために母親は無残な死に方をしました。そうまでして守るべき掟などあるのかと納得できません。ただ怖れ、従うことを断固拒否します。
どんな恐ろしいことがおきるのか、そしてそれを防ぐことはできるのかと探求していきます。
ただ盲目的に従うのを受け容れられません。

後半は王獣編から十一年の時を経て物語が始まります。ヒロインも成長し結婚し、子供がいます。
そして、ヒロインの過酷な運命がまた始まります。

獣の奏者 (3)探求編
上橋 菜穂子
講談社
2009-08-11

獣の奏者 (4)完結編
上橋 菜穂子
講談社
2009-08-11

 物語のスケールが大きく、国家指導者たちが、これが運命とばかりに戦争やむなしの時流に呑み込まれます。
 最強の王獣を操れるヒロインもその戦争にからめ捕られます。
 「恐ろしいこと」が起きるのを想定しながらも、今度は掟や伝説などの脅しにせず事実を伝えて欲しいとヒロインは主張します。運命に翻弄されながらもその運命に負けない強さをもっています。それならできることをしようと決意します。 

読み終わった後もしばらく、このストーリーの世界から出られませんでした。

完結篇の終わりにヒロインの一人息子ジェシを通して平和についてとても的確な表現がありました。
引用します。
「母の葛藤を間近でみることでジェシは戦というものは、ひとりの英明な人の英雄的な行為で止められるものではないことを思い知った。」
「人は群れで生きる獣だ。群れをつくっているひとりひとりが、自分がなにをしているのかを知り、考えないかぎり、大きな変化は生まれない。かつて、木漏れ日のあたる森の中で母が言っていたように、多くの人の手に松明を手渡し、ひろげていくことでしか、変えられないことがあるのだ。」

ヒロインと共に生きた著者だから、このような表現が平易な文章で書けるのでしょうか。

今、日本の民主主義が問われています。
私にもこのジェシの言葉のような自覚が必要です。

追記・「外伝 刹那」を読み終えました。


短編・中編集です。
獣の奏者の登場人物にまた会えるのが嬉しいです。

著者の中にはエリンやイアル、エサルがこのように深く醸成されてたと思いました。

〇短編「綿毛」(文庫書き下ろし)
 エリンの母、ソヨンのひとときの話。
 夫は既になく赤子のエリンを育てているソヨンが描かれてます。

〇中編「刹那」
 エリンとイアルの同棲、結婚、ジェシ生まれるまでの話。
 二人がお互いの立場を理解し、一緒になった覚悟を読むと自分の運命に立ち向かう強さが迫ってきます。
 既に読み終えている本編のこの先の過酷な運命を思うともの悲しくもあります。
 でも、自分の人生をあきらめないことは後でどんな運命が待っているにせよ生きていく上で大切かもしれません。

〇中編「秘め事」
 エサルの若い頃の話。秘めた恋とカザルムで教職につくまでの経緯。
 エサルがエリンやイアルを本編でなぜあれほどまで受け容れられる人だったのかが納得できます。

〇短編「初めての」
  ジェシが二歳の頃のほほえましい話です。

 

私と一緒に勉強したい方は

鹿の王

出版されたのが昨年なのに
図書館の予約者が160人!
本屋大賞を受賞の影響もあるかもしれません。

上橋菜穂子さんのこの世にない、架空の世界でありながらリアリティあふれるストーリーです。


読み始めた時、守り人シリーズに比べておちついた書き出しでだいぶ趣が違うと思い、ゆっくり読めるかなと思いました。しかし、上巻を3分の1読み終えた頃には読むのをやめられなくなりました。
それでも、すぐに読み終わるのがもったいないという葛藤が…(笑い)多少スピードをセーブしました。

激烈な感染症から生き残ったのは二人…男と赤子。
男はその赤子を捨て置けず、連れて捕虜の奴隷生活から逃亡します。

その伝染病の解明と治療を探求する名門出身の
頭脳明晰な青年が登場します。

この二人が主人公です。
追うものと追われるもの。追われた先での信頼を得るまでの生活。
民族間の軋轢や葛藤。
こまやかな描写と、医学の知識、重厚でありながらも、重くなり過ぎないストーリー。
全くタイプの違う、この二人の主人公が魅力的です。


鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐
上橋 菜穂子
KADOKAWA/角川書店
2014-09-24

鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐
上橋 菜穂子
KADOKAWA/角川書店
2014-09-24

 
読み終わった後、しばらくこの世界から抜けられなくなりました。 

時を経てまた読み直したら別な発見がありそうです。

 

私と一緒に勉強したい方は

守り人シリーズ「炎路を行く者」と8月の終戦放送

守り人シリーズ
「炎路を行く者」の感想を加えます。


 守り人シリーズの外伝、「炎路を行く者」を読みました。これは「蒼路の旅人」に登場した魅力ある人物ヒュウゴがいかにして敵国のスパイになったかを描いたものです。
 ヒュウゴの父は帝の直属の近衛兵で、ヒュウゴは忠臣教育を受けて育った少年でした。父親は帝を護って戦死し、近衛兵の家族は皆殺しにされます。ヒュウゴの母親と妹も殺されました。しかし、国が亡びたあと、実は信じていた支配者たちはうまく立ち回りその後もぬくぬくと暮らしているらしいと知ります。忠誠を誓った自分たちは駒に過ぎなかったと気づきます。ヒュウゴは葛藤し、新たな一歩を踏み出すまでが描かれています。
 


 たまたま、これを書き足しているとき、終戦記念日直前でした。
 この時期は戦争関連の放送が多いです。
 その中で、ある女優さんが若い頃、特攻隊の慰問に行ったときの話がありました。
 玉音放送で終戦を知った後、特攻隊の青年たちがそれを受け入れられず、特攻機に乗って飛び立って行ったと。その轟音をいくつも聞いたという話でした。すでに敵はおらず、戻れない装備の飛行機で飛んだということは自殺と同じです。彼らの母親がそれを知ったらどんな気持ちになるのだろうかと…戦争が終わったと後なのにと…女優さんは絶句しました。
 国のために死ぬことを徹底的に叩きこまれた少年たち。信じていたものが消滅したことは自分の立っている場所がなくなったことと同じです。床が抜けたような感覚…言葉にもできない、裏切られ、どこにもぶつけられない怒り。
 信じていた国に裏切られたのですから、死ななかった人たちも、自暴自棄になった人はほんとうに多かったと思います。
  戦後の子供達を写した写真展を見に行ったことがあります。その中にたばこを吸っている子供の写真がありました。その子供の目がヘビのように鋭くて怖かったです。すさんだ表情でした。

 この物語のヒュウゴは帝に仕え、帝のために生き、帝にすべてを預け何も考えずにきたのです。その国が亡びたあと、自分はなんだったのかと。荒れるヒュウゴが戦後の若者達に重なって見えました。
 国に忠誠を誓うよりも、自分に忠誠を誓いたい……悩むヒュウゴがひかれた言葉です。







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奥行の深い児童文学 「守り人」シリーズ

当時小6の教え子に「精霊の守り人」を勧められました。

精霊の守り人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
2007-03-28


最近、TBSテレビのゴロウデラックスで
著者 上橋菜穂子さんがゲスト出演されたのを偶々みました。
番組の中で
文化人類学者の視点から、
為政者が文化の異なる国民に
よかれと思って自分の価値観で政治を行い悲劇を生んでいることにふれ
「善意ほど怖いものはない」と穏かな表情で語られたのが印象的でした。

「精霊の守り人」読みました。

その奥行のある世界観にすっかりはまりました。
随分前に発表された作品なのに知らなかったなんて…。

権力者の自分の権威を守るために伝説を作り、
歴史を改ざんする話なども盛り込まれ、
世の中を読み解く力の重要さを感じました。


たまたま並行して「昭和天皇・マッカーサー会見」豊下楢彦著・岩波書店を
読んでいたので頭の中でリンクしてしまいました。


こんな変わった組合せで読む人もあまりいないと思いますが。
このドキュメントは慎重に検証を重ねた本でした。
私が学校で習い、親から聞いていた「歴史」とは随分違いますので少なからずショックを受けました。

さて「守り人」シリーズ。
この物語は私の苦手な教訓めいたものはなく、
登場人物も魅力的で
ぐいぐいひきこまれていくストーリー展開のおもしろさにも魅せられました。

読み終わったらすぐに「闇の守り人」「夢の守り人」「虚空の旅人」と次々読みました。









「神の守り人」来訪編と帰還編を読み終わりました。


この物語も人間の心に対する深い考察を感じる物語でした。




差別される民族に
圧倒的に大きな破壊の能力を持ってしまった少女が登場します。
紆余曲折の後、
差別する側を破滅させ、
同族をたすけるためにその力を使うことを要請されます。
それは大量殺戮を意味します。
少女は拒みます。
ところが、
同族の女性の殺されそうになるのを目の当たりにして
少女の怒りがふくれあがります。
はげしく怒りを燃え上がらせながらもその力を使いたくないという
少女の葛藤と結末が心にひびきました。

物語はだれかを悪人にせず、
主人公を妨害する人々にも
どうしてそうなるに至ったかの裏付けもしっかり描かれています。

勧善懲悪ではない。

この物語の視点がほんとうに必要です。




(追記)
終わりの三部作へつなぐ「蒼路の旅人」、


「天と地の守り人」三部作も読み終わりました。




これで本編10冊を読み終わりました。

外伝を読み始めています。




軽装版 炎路を行く者 —守り人作品集— (軽装版偕成社ポッシュ)
上橋 菜穂子
偕成社
2014-11-18   ※この本は 
           「守り人シリーズ
           炎路を行く者と8月の終戦放送」に
           感想をまとめました。



本の版は読んだものを選びました。

「守り人」シリーズを全部読み終わったら…

教え子に「獣の奏者」シリーズを勧められました。

すぐに次に移るのがもったいない…
しばらく余韻に浸りたい…。
でも読んじゃうかな。

守り人シリーズは私にとって今夏の大収穫です。





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