アニメ、サイコパスのパート3が放送終了しました(2019年10月~全8話)。ダークな話ですので気楽なアニメではなく、当初は見なかったのですが、教え子からパート1を見ていると聞き、気になり見ました。途中からだと複雑で「わからない」(苦笑)。でも、見ました。

 私は「攻殻機動隊」が好きですが、サイコパス2からは構成、脚本に共通の方がいました。その冲方丁さんは「攻殻機動隊」の製作中に「サイコパス」のオファーが来たそうです。


 ここからは2012年に放送されたパート1について触れます。



 ご存知の無い方のために

基本設定は…
 人間の適性を計測できる「シビュラシステム」に支配された近未来の日本です。
 その計測された数値により進路、職業も決められる…
 更に犯罪係数も測れ、それが高いと「潜在犯」と裁かれ、矯正施設行きです。

 この物語は犯罪を取り締まる公安局の刑事課のメンバーが主役の群像劇です。

 刑事課の役職で目立つのがこの二つ
「監視官」
 犯罪係数がない、クリアでエリートです。
  新人監視官として常守 朱(つねもりあかね)が登場します。
「執行官」
 監視官の部下。
 シビュラシステムに弾かれた潜在犯の中から適正を認められ、起用された人たちです。
 行動には監視官の許可が必要であり、通常は外出できません。

 執行官の本音を、5歳で犯罪係数が高いとされ隔離され育った21歳の青年、秀星(かがりしゅうせい)というサブキャラクターに随所で語らせてます。

 おもしろいのは中に、元監視官の執行官がいることです。犯罪係数があがりすぎ、執行官に降格された設定です。そのあたりの人間関係も描かれます。
 狡噛慎也(こうがみしんや)、主役の一人です。

 その狡噛慎也と常守朱がペアを組み物語は進みます。

 使う武器、「ドミネーター」という「銃」が特徴的です。

 ドミネーターは銃口を向けると対象者の色相を瞬時に計測し射殺するか否かを指示します。
 初期のストーリーで、事件に巻き込まれ、人質にされた女性の方も色相が悪化したと、ドミネーターが射殺を指示する場面がありました。

 人間ではなく、機械が数値化して「判断」します。

 物語が進むと、その矛盾、葛藤もしっかり衝いてきます。

 ドミネーターの声には、実際に電化製品や自動車のナビ音声を多く担当された声優さんを起用しており、凝ってます。



 原案者、虚淵玄さん、この物語の発想について
 虚淵さんは『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)が評判になり、サイコパスのオファーがきたそうです。ちなみに「まど☆マギ」も長寿コンテンツ…2020年1月に外伝の放映が始まりました。

虚淵さんは犯罪係数は思い付きだけど。
企画会議で

「そもそも数字って何よ」

 最初は体脂肪率…うのみにしていいの、でも分かりやすいし信じやすい。その数値だけで健康って割り切っていいの。他に何か(病気が)ひそんでいるかもしれない。
 他のスタッフも身近な数字を挙げたそうです。クーラーの快適温度、偏差値、DNA、さらに、占いのラッキーカラー。

 見なければすむのに気にしてしまう。


 軽くこう言われてましたが…深いです。
 このアニメが2012年に放映開始され、今も作り続けられているのはこの発想への共感が原因かもしれません。

「数字で割り切ってしまうあやうさ」


 我田引水ですみません…私は偏差値にひっかかりました。

それを考案された方はその使われ方に落胆されたと聞いた覚えがあります。

便利ですが…

偏差値を前提に自分の進路を選ぶ…。シビュラシステムに似ている(笑)…。

例えば、アインシュタインは
4歳まで喋らず、普通に話せるようになったのは9歳だったそうです。


そこに、もし偏差値があったら…相対性理論はなかったかもしれません。

偏差値は少なくとも子供の個性を見ない傾向を強化したのでは。

人間は工業製品ではないのです。
人によってばらつきがあってもおかしくありません。
理解力の段階が人によって違う。

逆に工業製品のように子供が皆同じだったら…コワいのでは?

でも、これを私たちは子供に押し付けてきたのではないでしょうか。

「皆と同じになれと」

勉強も、できない側の努力不足と一概に片づけるのはどうなんでしょうか。

教育は誰のためにあるのか。

現実にはシステムに合わないならば、子供側を合わせようと努力させる。
それを疑問にさえ思わない…
今もそれが続いています。

不登校はそれらへの拒絶反応のひとつでは。

皆と同じにしないといけない学校。
「私」がいなくなると言った8歳で不登校になった子もいます。

その子に合う学びを工夫する。
教育側を子供に合わせる。

昨今の不登校に対しての周囲の変化は…
「死にたくなるなら学校へ行かなくてもいい」と言い出しましたが、
当初は、世間も理解をしめしてきたと思ったのですが。

でも「死にたくなるくらい深刻でないと認めないのか」と問われると言葉を失います。

まだ人間を、子供を見ていない…。

不登校でなくても…
偏差値という数値化はわかりやすくて便利ですが…
明確に「できない」と烙印をおされる感覚、
中学受験では早い子は10歳前後から偏差値にさらされますから、親や大人のフォローが必要です。

子供は自分の気持ちを言語化できません。出来ないから、体の具合が悪くなったり、体に出なければ反抗的になったり引きこもったり、そんな反応が出ます。でも反応が出るだけましかもしれません。出ない方がゆくゆく心配…大人になって動けなくなる人も。


 さて、アニメのサイコパスは犯罪を起きないようなシステムの世界。その設定でどのような犯罪が起きるか、脚本の方々の腕のみせどころ…です

 
 パート1ではシビュラシステムについては興味深い結末を出してきました。

 ここからはストーリーの前提に関わる重要なネタバレになります。

 シビュラシステムのコアな部分、実態を捜査官ふたりが別々に目撃します。

 一人は執行官の縢秀星。彼はこんなものに自分の人生を歪められたと自嘲気味な反応をします。秘密を知ったがゆえにその場で組織中枢の上司に射殺されます。

 もう一人は常守朱。彼女はの死を知りません。を射殺した上司は何もなかったように彼女に接します。

 彼女もシステムの秘密に驚愕しますが、
 社会秩序を保つために必要と、シビュラシステムを自らに進んで受け容れます。

 縢秀星は行方不明と処理されますが、仲間の捜査官たちは誰もそれを信じない…でも追及もしない。そんな終わり方でした。

 ただ、狡噛慎也は組織に疑念をもち姿を消し……余韻を残してパート1は終わります。

 企画の段階で狡噛慎也のような信念を貫く人物を登場させると決めてたそうです。
 シビアなストーリーですが、狡噛の存在は救いです。

 続編にあたる映画では、彼が中心です。

 それにしても、シビュラシステムは架空ではなさそう。

 偏差値もそのつもりがなくても、人の評価に広げてしまい、シビュラシステムに似ているかも…このアニメは侮れません。

 最新話のパート3は
 登場人物を総とっかえし、主役の二人におもしろい性格をもたせてます。お話も潜在犯と測定された集団に宗教者をからめる、ディープな内容になっています。連続テレビアニメには珍しい1時間の長尺ものでした。でも長いと感じませんでした。緻密で、正直、ぼーっとみていると訳が分からなくなります。最終回は釈然としない終わり方をしました。でも、考えさせてくれるアニメは好きです。


参考映像



 


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