何で夏目友人帳にはまったのでしょうか。
いろんな見方があると思いますが、

私が惹かれたもので

一番大きいのは
多分、主人公夏目が
自分の存在価値を見出していくお話が多いから…

他の人には見えないものが見えることから、
怖がられ、疎まれた、少年が自分の居場所を見つけ、
誰も見ていなても
自分が正しいと思うことをしたいと行動する。

シリアス一辺倒ではなく軽く笑える部分があるので
読んでいても気づまりになりません。

夏目は
親戚をたらい回しにされて、気を使って苦労している。
それを恨みに変えなかった。
同級生西村になんでぐれなかったのと聞かれると、
そんな余裕はなかった、
ぐれたら居場所がなくなると思ったと応えてます。

親戚の扱いがひどかったとしても
自分が変わっているから当然だと思ってます。
だから、温かく迎えてくれた藤原夫妻との生活では
小さなことにも幸福を実感します。
そんな繊細な夏目に、声優神谷浩史さんの声がぴったりです。
今の幸福を壊さないためふりかかる事件にいどみます。
命に関わる危険な事件も少なくありません。

解決した事件の中には、人間を守れたものもありますが、
それを知る人はまずいません。
数少ないそれを知る人間は
夏目が見えることを知っている人たちです。
友人の田沼と多軌、柴田、ほかは祓い屋の名取、的場、七瀬たちです。
ただし、彼ら自身が関わったごく一部の事件に限ります。

※物語紹介は、「アニメのシーズン数ー何話 タイトル」を表します。今のところ6シーズンまで放映されてます。

「3-10~11割れた鏡、映すもの」で、
田沼が妖にとり憑かれたときに
夏目が自分たちと疎遠になる時があったけど
あれは事件に関わっていたんだと気づきます。
それに対して
夏目の「用心棒」の斑が
こんなのしょっちゅうだと応えたので田沼は驚きます。

「6-3二体さま」では、
事件解決後に柴田は人の役に立ったよと言いますが、
夏目の反応は
たまたま役に立ったけだけ。そうだったらうれしいなと。

よって、ヒーローにならない。これもいい。

おまけに
夏目は物語が進んでも
急に妖怪が現れると、悲鳴をあげるのが笑えて楽しいです。
 物語の回を重ねても成長がないとのツッコミもありますが、私は好きです。


二つ目は
夏目の用心棒、協力者の妖怪、斑(まだら)が
単純な正義の味方ではない。
「4-9月分祭」で夏目に協力するときも、
美味しいお酒の湧くところを守れるからと言います。
その言動は
斑のエゴにもとれるし、夏目に協力するテレにもとれます。
そんな、気まぐれさがいい。
夏目の思いの強さにひかれて助ける感じもします。
物語の終わりにとても含蓄のある事を言うのもいい。

三つめは
祓い屋の名取周一
華やかでおかしみがありながら、陰のある青年、そのコントラストが魅力的。
オーラを放ちながら花に囲まれて登場し、
反面、皮膚を動き回るヤモリ形の妖怪が不気味。
生い立ちは孤独で夏目と似ていますが、考え方は違い、
妖を憎んでます。

夏目は人も妖も差別しない。

そんな夏目に名取は少しずつ感化されます。
物語初期は
妖怪に対して辛辣な物言いをしたのですが、
「4-9~10月分祭・祀られた神様」では、
名取が妖怪を祓うことに迷いが見えると夏目が感じます。

この変化もおもしろいです。

この名取を演じている声優、石田彰さんは秀逸です。
短い言葉にあらゆる感情をのせて表現します。
ご本人は
他のドラマで同様のことをファンに言われたとき
「自分の意図しないところまで
とらえてくれて有難いですね」と言っていますが…
そうであってもスゴイ…

四つめは
読んでて不快になる悪者も登場しません。


祓い屋の的場静司はやや悪役ポジュションです。
「友人帳」のことを絶対に知られてはならない人と描かれてます。
「5-3~4祓い屋からの手紙・連鎖の陰」では、
夏目の協力を得ようと夏目の秘密「見える」ことを藤原夫妻に話しましょうかとほのめかしました。夏目にとっては脅迫に等しいです。結局しませんでしたが。
反面、的場の人間らしい面も
祓い屋は妖怪と契約を結んで仕事に協力してもらうのですが、
的場家は妖怪から信頼されず、特に高貴な妖とは契約が結べません。現在は妖怪とは利害関係で結んでいるようです。それを静司は割り切っているようですが、少年時代「5-4歪みなき世界」では自分が妖と契約できたら「大事にするんだけどな」と名取にもらしています。それが叶わなかったので今の的場になったとも取れます。

そんな背景が描かれると悪者と言い難くなります。
アニメは諏訪部順一さんの声もいいですね。

五つめは
妖と人間との関係がいいです。

特に恋の話がわかりやすいので、3話あげます。

「1-8儚き光」ホタルの妖と青年
妖を見えたことで夏目と同じように孤独だった青年がホタルの妖と友達になり楽しい時をすごします。ところがある日突然、妖が見えなくります。青年はすぐ側にいるホタルを出てきてくれと悲痛な声で呼びます。そしてホタルは自分が見えない青年に寄り添い続けます…。最後にホタルたちが夜空に飛び立つ美しい場面が描かれてました。

「3-3偽りの友人」木の妖と少年(柴田)
妖は妖力が衰え、人間を食べたら回復するかもしれないと、少女に化身して柴田に出会います。ところが、柴田といるのが楽しくて食べるひまがなくなり…。柴田と一緒に走る場面が美しいです。

「6-8いつかくる日」烏の妖と少女
二人は幼馴染です。妖は人間と生きるスパンが全く違います。烏の妖は自分といると少女は不幸になると思い、自ら姿を消します。少女と再会しある決断をするのですが…。それに対する斑の言葉はシンプルですが含蓄がありました。

それらに関わった夏目もその都度ある感慨にふけります。

相容れないもの、理解しあえないものが出会って、
軋轢があってそれでも何とか受け容れようとする。

実らない恋ならば
相手の幸福を願い喜び、我が身を削る場合もある。そんなエピソードが心地よく、各物語の終わりの言葉や場面が美しいです。これらの話は何度も見たくなります。

この作者さんはすごいですね。

六つ目の魅力は、物語の背景の謎。
名取の皮膚を動き回るヤモリ形の痣の正体がわからない。
 専門家の的場でさえも「わからない」と言いながらも
 ちょっとコワいコメントを言いました。
 これが伏線にならなければいいのだけど。

夏目の亡き祖母レイコの存在
妖怪の話を通してレイコのエピソードはいくつか
断片的に語られています。
詳しいことはわかりません。

この作者は伏線の回収が上手ですが、
回収したら、夏目友人帳が終わってしまうのは…いやだな。

謎は謎のままでもいいとも…わがままなことも思ってしまいます。

さて、アニメも2017年に第六期が作られ、この秋(2018年)には映画も公開されるとのこと。人気があるのですね。
 テレビアニメでは悪くはないけど、物足りないと思う作品がありました。それらはアニメオリジナルストーリーでした。原作を織り交ぜているものはそうでもないのですが。

 さて、映画はどうなのでしょう。

四月の時点で、声優さんたちもまだほとんど内容を知らされてないそうです。

 現在(2018年6月)、BSでセレクト作品が放送中です。たまたま「水底の燕」を見ました。知っている話なのに感動しました。

 追記1・映画 うつせみに結ぶ 観ました。
テレビアニメそれ以上でもそれ以下でもない、映画だからと力んでいない、節度のある良作でした。テレビアニメと違って時間的に余裕のあるのでゆったりして安心して観られました。

 追記2・単行本23巻.24巻について。
23巻は名取と的場が登場しますが、名取と的場の会話の敬語の使い方に違和感がありました。ちょっとお話が痩せたような…と。ところが24巻は今まで登場していた妖の意外な面が見せられ、しかもキャラの絵も魅力的。また、多岐のエピソードで登場する新キャラのニャンコ先生への反応が笑えます。今までの財産を上手に膨らませたストーリーでした。こういうのは嬉しいですね。購入した日に何度も読み返しました。

 追記3:映画「石起こしと怪しき来訪者」(2021年)見ました。原作を丁寧にアニメ化した作品です。馴染みの妖怪が違う姿で登場するのですが…webラジオでその担当声優さん…全く違う声で演じようとしたらNGだったそうで…やりすぎたかと恥ずかしがってました…もとの妖怪が誰かと気づかれてもいいと言われた演じ直したそうです。もちろんビジュアルに合わせて青年らしい声には変えています。そこに興味がわいて見に行きました。やはり上手ですね。映画としては放映時間が…短い…テレビアニメを二本を見に行く映画です。夏目の世界が好きなら楽しめます。

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