大人と子供の脳の違いについて、興味深い本を読みました。


怠け数学者の記 (岩波現代文庫)
小平 邦彦
岩波書店
2000-08-17


 随筆と対談の本です。著者の小平邦彦氏は数学者で、日本初のフィールズ賞およびウルフ賞受賞者だそうです。数学が得意な人でなくても楽しめる本です。(以下、引用は原文の各文末の敬体を常体にかえる等の変更はありますが、主旨は変えないよう留意しました。)
 
  こどもは小型の大人である。子供の能力は大人の能力を一様に縮小したものである
  これは間違ったとらえ方である。子どもは理屈抜きの記憶力がある。

物事には子どものときに習得しておかなければ大人になってからではどうしても覚えられないことと、大人になってからでも簡単に覚えられることがある。
子供の時に習得しないと大人では覚えられない教科とは…読み書きである。
小学校の基礎教科(日常生活に必要なもの)まず国語次に算数

子供の成長に合わせてまず基礎教科を徹底的に教え、他の教科は適齢に達してから教えるべきであるという基本は今も昔も変わらない。現在の初等・中等教育はこういう全教科を統制する基本方針が欠けているように見える。

ある教科をまだその適齢に達していない子どもに教えようとすると、教える内容はつまらないものになり、結局時間と労力の浪費になる。現行の小学校一年の理科や社会の教科書を見れば直ぐにわかる。

現在の小学校の一年から週2時間社会を教えているが、仮に昔のように社会を五年から週4時間教えるとすれば現在一年を教えている内容を教えるには二週間あれば十分であろう。

このように適齢に達してから教えれば簡単に教えられる内容をなぜ苦労して一年から教えなければならないのか理解できない。(略)そして五年になれば国語の実力がついてるから、一年からはじめるよりずっと能率よく教えられる。理科についても事情は同じだ。
 (注)この本が出版されたのは1986年です。理科と社会の小学校低学年の履修については、1992年に小学一、二年の科目から理科と社会はなくなりました。

 大人と子供の脳の違いの記述は興味深いですが…

 子供の脳の発達はすごいですね。
 小学一年生で、一年間かけても難しい内容が五年生になったら二週間あれば十分に学べてしまう。勉強は脳の発達に合わせて行うのは効率がよく、子供も学びを楽しめそうです。
 
 教育は成長の段階に合わせることが必要なんですね。

 また、何でも早ければいわけではない…。

 幼児教育についても脳科学者の澤口俊之氏は著書「発達障害の改善と予防」で発達障害を疑い、診断を受けに来た子供の中に、脳に問題はないのに、発達障害と同じ兆候を示す子供がいました。その子たちに共通していたのは澤口先生曰く「非科学的な幼児教育」をうけたことだと述べています。

 脳は複雑な器官です。
 大人と子供の違いはもとより、人によって違うと類推できます。
 ところが、そのような考え方は体系だってあまり聞いたことはありません。
 
 特に勉強に関してはできないと「努力が足りない」と一律に教える側は言う傾向があります。


 脳の発達に関しても個別に見る目があってもいいのでは。
 授業を一回聞いただけで覚える人がいます。
 繰り返すと覚えられる人がいます。
 何度聞いても受け付けない人もいます。
 それをモチベーションで克服する人もいます。でもそれだけでは済まないこともあるのでは?
 

 以前、ある英語の先生の体験を読みました。その方は中学から数学ができなくなり、高校でもまったくだめで、数学の入試がない大学に進学しました。その方は教職をとるためやむを得ず数学の勉強を再開したら、思いがけず簡単に理解できてびっくりしたそうです。これは、資格をとるというモチベーションもあったけど、数学の理解力も育ったのではおっしゃられていました。

 この方の場合は数学を理解できる脳が発達したのは大学生以降だったということでしょう。これは分野別でも物事を理解する脳の発達のスピードが人によって違うと捉えてもいいと思います。

 勉強の出来ない子に「やればできる」と言うのが普通です。

 しかし、このようなことも考えられるので一概に乱用はできません。
 
 また、今できなくても、できるときがくる可能性があるということでもあります。

 先の方も英語は得意でした。高校では数学の先生が担任でしたので「英語ができるのに…数学は出来ない…努力不足…」と対応され、居心地が悪かったそうです。残念ながらよくありがちな話です。でも、もしこの先生が分野別にも理解力が発達するパターンは個人によって違うと知っていたらその方への対応も違っていたのではと思います。

 やればできる、できないのはやらないからだと全員を判断するのは…危険です。

 いつかは分かりませんが、その子の中でスッとつながる時があります。そんな経験を持った先生もおられると思います。

 私もこんな経験があります。
 ある小4の子は、小数の桁とりが出来ませんでした。繰り返し学習しましたが一向に進展しません。出来ないと言うよりも受け付けない感じがしました。それで、その単元を離れました。その学年の終わり、学年のまとめにと再度その単元をやってみたら…時間がかかると想定していたら…あっけなく簡単にでき拍子抜けしました。それまでの間、一回も復習してません。これは脳の中ですっとつながる回路が出来たからと思えました。

 教える側は脳の発達の仕方は人によって違うことを認識すれば、子供に対する態度も謙虚になれると思います。
 総じて…あることが出来なくても少なくともそれはその人のごく一部に過ぎません。そう認識して子供たちに接することは大切です。

 
 
 
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