守り人シリーズ
「炎路を行く者」の感想を加えます。


 守り人シリーズの外伝、「炎路を行く者」を読みました。これは「蒼路の旅人」に登場した魅力ある人物ヒュウゴがいかにして敵国のスパイになったかを描いたものです。
 ヒュウゴの父は帝の直属の近衛兵で、ヒュウゴは忠臣教育を受けて育った少年でした。父親は帝を護って戦死し、近衛兵の家族は皆殺しにされます。ヒュウゴの母親と妹も殺されました。しかし、国が亡びたあと、実は信じていた支配者たちはうまく立ち回りその後もぬくぬくと暮らしているらしいと知ります。忠誠を誓った自分たちは駒に過ぎなかったと気づきます。ヒュウゴは葛藤し、新たな一歩を踏み出すまでが描かれています。
 


 たまたま、これを書き足しているとき、終戦記念日直前でした。
 この時期は戦争関連の放送が多いです。
 その中で、ある女優さんが若い頃、特攻隊の慰問に行ったときの話がありました。
 玉音放送で終戦を知った後、特攻隊の青年たちがそれを受け入れられず、特攻機に乗って飛び立って行ったと。その轟音をいくつも聞いたという話でした。すでに敵はおらず、戻れない装備の飛行機で飛んだということは自殺と同じです。彼らの母親がそれを知ったらどんな気持ちになるのだろうかと…戦争が終わったと後なのにと…女優さんは絶句しました。
 国のために死ぬことを徹底的に叩きこまれた少年たち。信じていたものが消滅したことは自分の立っている場所がなくなったことと同じです。床が抜けたような感覚…言葉にもできない、裏切られ、どこにもぶつけられない怒り。
 信じていた国に裏切られたのですから、死ななかった人たちも、自暴自棄になった人はほんとうに多かったと思います。
  戦後の子供達を写した写真展を見に行ったことがあります。その中にたばこを吸っている子供の写真がありました。その子供の目がヘビのように鋭くて怖かったです。すさんだ表情でした。

 この物語のヒュウゴは帝に仕え、帝のために生き、帝にすべてを預け何も考えずにきたのです。その国が亡びたあと、自分はなんだったのかと。荒れるヒュウゴが戦後の若者達に重なって見えました。
 国に忠誠を誓うよりも、自分に忠誠を誓いたい……悩むヒュウゴがひかれた言葉です。