その子は小学校低学年の頃は作文が書けませんでした。
 難しく考えなくていい、「あったことをそのまま書きましょう」と話しました。
 それでも一文字も書こうとしません。それでその日のあった出来事を少しずつさかのぼって…聞きました。「何時ごろ(学校から)戻ったの?」「学校の帰りは何かあった」「午後の授業は何をしたのかな」「お昼は何を食べたかな」などと思い出して、書き出しました。特にお昼に何を食べたかを沢山思い出しました。それをつなげました。これは、事実の羅列…でもこれも立派な作文です。

 中学生になって、作文の宿題がでました。下書きを見ると「それから」を多用した、事実をつなげた作文でした。でも、誰の助けも借りず自分だけで書いたものです。一文字も書けなかったことを思えば大進歩です。

 推敲を頼まれて、一緒に誤字脱字などを直しました。その書き直しをしていると、教え子は別な事実を思い出して、「楽しそうに」新たに書き加えます。そういう様子を見たのは初めてでした。とても嬉しくなりました。

 それならばと、感想も加えるともっといい文になります。

 「その事実があった時どう思った?」と質問しました。しかし、気持ちを表現する言葉がすぐに出てこずペンがピタッと止まってしまいました。それで、「嬉しい」「かなしい」「よかった」「残念だった」など気持ちを表す言葉をいくつか書き出して、選んでもらいました。そうすると文章が生き生きしました。

 でも、無理に書かせてはいけないとも思いました。

 先ほどは実に「楽しそうに」事実を書き加えていました。その「楽しそうに」は教える側が意図しても簡単に出てくるものではありません。

 教師はつい、「これが出来たからあれ」「あれが出来たら次はそれ」というように、すぐに更なる要求したくなります。でもうっかりすると「楽しそうに」を消しかねません。それを潰してしまったら勿体ないです。元も子もありません。「楽しそうに」は自発で、積極性であります。それを大切にしてゆっくりと次の段階へ行くように誘導したいと心がけました。

 以前のことを思い出すと、今、「楽しそうに」次から次へと事実を書いている姿がとても好ましく思えました。 急ぐことはないのですね。事実の羅列がいいのです。

 


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